内田諭・大賀哲・中藤哲也編『知を再構築する 異文化融合研究のためのテキストマイニング』(ひつじ書房、2021)を読みました。
本書は、KH Coderを使用したテキストマイニングの基本的な使用法と、KH Coderを利用した具体的な研究実践が報告されています。
第1部は基本的な事項と使用法についてです。
第1・2章は、KH Coderの基礎的な事項の解説。文字コードの説明など分かりやすかったです。
第3章は、KH Coderのコーディングの説明です。
第4章は、テキストマイニングのツールとして、KH Coder以外のツールも紹介されています。
個人的にはRMeCabが気になりました。私はまだ触っていませんが、N-gramできるみたいです。私は、できないなりにpythonで実装してN-gramやったので、ちょっとショック・・・。
KH Coderの使い方も紹介されていますが、少し上級の説明です。複数の外部変数を入れる方法があげられ、これは使ってみたいなと思いました。
これ以後実践編ですが、多領域から実践報告がなされます。特に興味深かった章をピックアップします。
第8章は、政治学を視点にします。
国際政治で有力なイズムの分離(リアリズム・リベラリズム・コンストラクティビズム)が、世論にも見られるかを検証しています。そのために、まず選択の問において、三つのイズムの分離状況を確認し、その後自由記述欄でそれぞれのイズムを選んだ人達が、どのような語彙を用いたかが分析されます。その分析にKH Coderが使われます。
イズムによって使用語彙は異なることがわかり、世論においてもイズムの分離が見られると結論されます。
第9章は教育学です。
協同学習(地域の問題を地域の大人と小学生が議論する)における、大人・子ども・全体の発言をKH Coderで整理しています。本章の主旨としては、子どものみの発言では、漁業の問題が非常に身近な問題として狭く捉えられているが、大人の発言が入ることで子どもの視野が広がると言ったことでしょうが、共起ネットワークがとても面白かったです。
子どもは魚を海藻や肉と比較してしか話せていませんが、大人は経済の問題、地域の問題、そして協同学習としての問題など、かなりきれいにカテゴリ分けされています。しかし、全体としてみたときは、そうきれいに浮かび上がりません。子どもがいることで、大人達が説明に苦労していた様子が浮かび上がっていました。
第10章は、社会学です。
毎日新聞と西日本新聞とにおける福島原発事故の報道が比較されています。そして、西日本新聞が、長崎の原爆の問題から、核問題へと展開を広げたことが指摘されています。
それぞれに読み応えがあり、今後どうKH Coderを使っていくか考えさせられました。