牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

競争しない子育て_『世界一幸せな子どもに親がしていること』

リナ・マエ・アコスタ&ミッシェル・ハッチソン『世界一幸せな子どもに親がしていること』(日系BP社、2018)をよみました。

簡単に感想をまとめます。

子育てでも競争社会

  • それに対し、イギリスやアメリカの親たちは、自分で課した非現実的な期待や他人の意見に流され、絶えず何かの課題を抱え、平静さを失っているように感じる。その結果、子供達が人生において有利なやつスタートを切れるようにと親が何でもかんでもお膳立てすることや物質的な豊かさがいつも必要だと考えている。10ページ
  • こうした画一的な考え方が押し付けられるようになったのは、学校で優秀な成績をとれるのがいい子供であり、良い教育の指標であるという社会のものさしのせいでもある。11ページ
  • アメリカの子育ては「子供を持つことを決めたのはあなたの選択なのだから自分で対処するべき」と考えられ、地域社会の問題というよりは個人の問題とみなされる。270ページ

子どもをかけっこでも勉強でも一番にすることが、親の務めである。そんな考えを耳にすることはありますし、そうしてあげられない自分を親として不十分なのかなと思うときはあります。

 

競争しない、たくましい子育て

  • オランダ流の子育ての秘密を他に挙げるとすれば、まず神経質にならないこと、そして直面する問題や挫折を全て受け入れる柔軟な姿勢を持つことだろうか。100ページ
  • 宿題は小さな子どもにとって時間の無駄で、学習能力を深めるにはほとんど役に立たないという多くの調査結果を目にする。138ページ
  • 罰すれば、どうすれば罰せられないかを教えることはできるが、何が悪かったのかを教えることはできない。マンチェスター大学の子供調査センターの最新の調査では、幼い子供の善悪の判断基準や正義感は、怒られたり罰を受けたりするよりも、遊びによって培われるという結果が出ている。180ページ

子どもを罰し、子どもに課題を与えることは、必ずしも子どもの成長につながらないということですね。罰することも課題を与えることも、親としては楽しいことではないので、やっきになって取り組む必要はないのですね。

 

オランダ人のアイデンティティの持ち方

  • オランダ人の友達が「オランダ人は、自分がどれだけすごいことを成し遂げたかなんて気にしない」と言った。このことの重要性は、私のような外国人にとっては見逃してしまう点だろう。確かにオランダでは、自分ができるだけ中間の程々の所にいて、自己顕示欲を抑える文化がある。子供の才能に目を向けることに熱心な人もいないことにも納得がいく。120ページ
  • また二人は、幸福に関して最も大きな負の影響を及ぼすのは、貧困ではなく不平等であるという主張を続けている。257ページ
  • ロンドンやサンフランシスコよりもアムステルダムの方が、仕事とアイデンティティのつながりは薄い気がするとクロックさんに問いかけた。このオランダではパートタイム勤務あるいは仕事をしないことは普通のこととみなされ、それが恥ずかしい面目を失うものだという考え方はないからだ。(略)「オランダには家庭的で居心地の良さという強い伝統的な部分があるので、オランダ人女性は働くことを特権だとは感じていないんです。職場では、長時間働いて上司の指示に従わなければならない。でも家庭では、自分自身が上司なんです。そのことを一部のフェミニスト忘れがちなんですけどね」277ページ

文化人類学系の本を読むと、部族内の平等が尊重される慣習を目にします。新自由主義にはそぐわないかもしれませんが、競争心と自己顕示欲とを抑制することは、大切なようです。

 

10代の子どもを自立させる

  • あるオランダ人の子育て本には「子供が学校で自分で行く時に雨だろうが風だろうが重いリュックサックを持っていようが、それを可哀想だと感じるべきではない。その代わりに子供は責任感と自立心を養うことができる」と書いてあった。196ページ
  • 親に対する実用的なアドバイスとして、ビスショップさんは親に対し10代の子供がなくしたものを一緒に探さない、そしてすぐに代わりの物を与えないことアドバイスしている。339ページ
  • 市内の子供は自信過剰で少し生意気で気難しい面をみせるかもしれないが、これは大抵の場合、ただ恐怖心と不安な気持ちから来ているのだ。353ページ
  • 彼女はかつて息子が家に帰ってくると、親の決まり文句である「学校はどうだった?」という言葉をかけたが、息子は他のほとんどの子どもと同じように、嫌な顔をして無口なままだった。子供にとっては、そうした親の行為は、子供を監視しているように感じさせ、負担にさせているのだ。356ページ

私は、こどもの荷物が多いとき途中まで一緒に持って行ってあげちゃってます。なくしたものも、怒りながら一緒に探してあげちゃってます。かわいそうだな、と単純に思っていましたが、それが子どもの自立を疎外するならば、抑えなくてはなりませんね。

他にも面白かった点として

  • オランダは家庭菜園が盛ん
  • レジャーと言えば、キャンプ。お金をかけてどこかのホテルにいくということはしない
  • 食事が質素で外食はしない。火を使った料理は夜だけで、朝と昼は簡単なサンドイッチなど
  • 自転車で雨の日でも通勤する

感想

子育てをしていると、子どものため、子どもが将来不利にならないように、と思って、子どもにも無理をさせてしまうことがあります。でも、競争し勝者になることが、必ずしも幸せをもたらさないならば、こどもに無理をさせる必要はないですね。勉強よりも、まず子どもを受け入れ、一緒に楽しく暮らすことを一番に考えたいです。

オランダでは、お金や地位を得たことがすなわち幸せだとは考えないのかもしれません。仕事がアイデンティティの重要な部分をなしていないというのは衝撃でした。私は仕事が楽しくもあるのですが、アイデンティティのためにやっている部分(かなり)があります。

でも仕事だけが自分ではないですね。仕事以外にもやりがいや幸せをもたらしてくれるものはたくさんあります。私もお金をかけずに人生楽しめるタイプなので、仕事ととの付き合い方は考える必要があるなと思いました。