牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

I presented at the Digital Humanities conference.

Last weekend, I presented at the Digital Humanities conference. My topic was the character of Miyazawa Kenji's expression. I analysed his expression using natural language processing. I divided his expression into word categories, counted all the words, and ranked them according to how often each word was used.  I was new to Degital Humanity , so perhaps my presentation was terrible. But many professors encouraged me, and gave me useful advice.
After the conference , we had the reception. I was so tired ,that a glass of beer refreshed me . I talked to many presenters about the reason why they were interested in Degital Humanities.  I couldn't explain mine. Because in my case , it was just curiosity. I wasn't thinking about the future of humanity. But I enjoy studying the new academic field.

 

分散と標準偏差_『完全独習 統計学入門』

小島 寛之『完全独習 統計学入門』(ダイヤモンド社、2006)を読みました。

 

私は、まずこれを最後まで読んで、演習をすべて解いた自分を祝福してやりたいです。

いや、というより、超ダメダメな人でも、最後までたどり着ける本書を祝福せねばならないですね。

 

本書は、分散、標準偏差カイ二乗分布、t検定の順で説明されます。そして、そのひとつひとつの説明が懇切丁寧です。私は、数学をやってると「これは何を意味する値だっけ・・・というか、いま何を求めているんだっけ?」となって、戻って問いてを繰り返し、いつの間にかあきらめてしまうことがよくあります。しかし、本書はそうなりそうなときに救いの手を差し伸べてくれます。ありがたい。。。

 

とりあえず、あるデータが正規分布すると仮定すると、一部の標本の平均や分散だけで、データ総体の95%が予測できる、ということがわかりました!

 

勉強になりました!次の本はどうしようか・・・。

 

 

 

患者はすでに自分で自分を助けている_『技法以前』

向谷地 生良『技法以前 べてるの家のつくりかた』(医学書院、2009)を読みました。

印象に残った部分は次の通りです。

 

  • (前略)きっと後味が悪くて、後悔することも多いと思うけれど、今の苦しさを緩和することにかんしては、あなたはプロですよ」/そういうことによって「自分を助けたい」という忘れかけていた動機が当事者に蘇ってくる。「すでに自分を助けようとしている自分」が見えたことによって、より効果的な新しい自分の助け方を一緒に見出して行こうとする連帯が生まれるのである。_25ページ
  • 現場でよく聞かされる言葉は「患者さんと距離を保つこと」であり、それは対人援助職の大切なわきまえとして定着している。しかし神谷美恵子から伝わってくる対人援助職としての姿は、当事者の現実から距離を取ることではなく、むしろその中に降りていき、辛い現実に共にたたずみ、共に弱くなることなのである。_48ページ
  • なぜなら統合失調症を抱える人たちの苦しみの中心には、常に「誰もそばにいない感覚」があるからだ。だからみんなは休日と夜間に弱い。人の気配がしないと、お客さんがやってくるのだ。_103ページ
  • 従来「幻覚や妄想といった統合失調症の主症状は、当事者の的な世界の出来事である」と考えられていたため、現場には長い間そこに立ち入ることをタブー視する傾向があった。幻覚や妄想の世界に立ち入ることは妄想の強化につながり、固定化すると信じられてきたからである。(略)そこで私たちは、幻覚や妄想に立ち入らないどころか、それらの忌まわしい体験を当事者も最もイメージしやすいキャラクターや、わかりやすい言葉に置き換えてきた。例えば幻聴につながる体調変化の兆しを「赤信号が点滅」と言い、自己対象を「自分を助ける」というように。そのような仕掛けによって、仲間や援助者に共通理解が広がってくると、当事者は主役としての役割を獲得しやすくなってくる。_127ページ
  • 「プライバシーの保護」は今、人が生きるという素朴な感覚と、私たちの日常的な暮らしの実感からかけ離れたところで肥大化権威化しつつある。精神保健福祉の現場に蔓延するプライバシーと個人情報の過剰な保護が、精神障害を持った人たち、特に当事者の生命線ともいえる「人と人との生命的なつながりをいかに回復するか」という命題に、深刻な危機を招く可能性を孕んでいると私は思う。_160ページ

 

宮沢賢治は幻覚を見、幻聴を聞く人でした。ただ、宮沢は幻覚幻聴をおそれるというよりは、それらと対話的に付き合っていました。こうしたことから、べてるの家に関心を持つようになりました。

 

これまで、精神的・肉体的困難を抱える学生と関係してきましたが、その困難への対処が、本人の中で自己効力感につながっているように見えることがありました。私は困難を取り除いたほうがよいように思っていたのですが、その困難が本人を支えているように見えるときがあるのです。その困難に本人は困っているので軽々しく言うべきではないのですが、その困難も含めて本人なんだという感覚ですかね。うまく言えないのですが・・・。

 

自分の研究の関心とはつなげられませんでしたが、ふだん私が悩んでいることに少しかたちをあたえてもらったように思いました。

 

勉強になりました。

 

 

 

 

 

攻撃は弱者がするもの_『身近な人の「攻撃」がスーッとなくなる本』

水島広子『身近な人の「攻撃」がスーッとなくなる本』(大和出版、2012)を読みました。オーディオブックなので正確には聞きましたですね。

 

私は実は勘違いをしていまして、攻撃的な自分を改善する本だと思って関心を持ったのですが、そうではなく、身近な人から攻撃をされないようにする本でした。けれど、とても面白く、最後まで読んでしまいました。

 

なるほどな、とおもった著者の考えは、以下の2点です。

 

1、攻撃は、脅威に対する反応である。

人は脅威を覚えたとき、闘争か逃避かの反応をします。攻撃は、強者が弱者を征服する行為だと捉えられがちです。でも著者は、攻撃とは、弱者が小さなことを脅威に感じ、それに対して闘争および逃避の反応をしたものだと捉えます。

 

そのため、攻撃を受けたとき、強い相手に対する恐怖を抱くのではなく、困った弱い人を見るまなざしで、お見舞いの一言でもかけてあげようと提案します。

 

ただ、これは寛容な博愛主義的な思想を根柢とはしていません。あなたの人生にそれほど関係のない人なら、いたわる必要もないから、自分の気分が悪くならないようにスルーしろという、自己中心的な思考を軸にしています。それがとても痛快に書かれています。

 

2、心も衝撃をうける

誰かから攻撃されたとき、強いショックを受けます。「仕事ができない」「頭わるいんじゃないの」遠回しにでもそんなことを言われたら、誰だってショックです。でも、このときの動揺や傷ついた気持ちは、物理的・生理的な衝撃に過ぎないといいます。

 

肘とか小指をぶったとき、ジーンとしていつまでも痛く、しばらくは普段の思考や行動ができなくなるくらい、あのジンジンが続きますよね。筆者のいう衝撃とは、このジンジンのことです。心のショックも一緒で、だからショックを受けたときは、その生理反応がおさまるまで大人しく待ちましょうということです。

 

ここのポイントは、ショックは衝撃にすぎないのだから、これをきっかけに自分の生き方を反省したり、社会批判をしたりするような、そうした大きな命題を考えるべきではない、ということです。たしかに、厳しいことを言われたとき、その落ち込みから「私の生き方は根本的に間違っているのだな」と盛大な反省に突入することがあります。その時の思索は冷静なものでなく、あとから考えて納得できるものでないこともしばしばです。

 

私の勘違いで出会った本でしたが、面白かったです。

 

 

 

優れた入門書_『テキストアナリティクスの基礎と実践』

金明哲『テキストアナリティクスの基礎と実践』(岩波書店、2021)を読みました。

 

デジタル・ヒューマニティーズ系の論文を読んでいると、常識として使われるような専門用語がたくさんあります。非常識な私は、もちろんそれが分からないので、調べるのですが、なぜそれが必要なのかが分からないときがあります。

 

本書は、そうした専門用語、t値、p値、k-means法などなど、基本的なことについて、その仕組みや役割を簡潔に説明してくれます。私としては共起を求める仕組みが分かったことが面白かったです。コンピューターによるテキスト分析の一連の流れがなんとなく理解できたことも、ありがたかったです。

 

ただ、簡潔さゆえに私には30%くらいしか理解できませんでした。本書のせいではありません、私がおろかなのです。

 

まずは統計の基礎を学んでから、もう一度読み直します!

 

 

正統派でも、低俗でもななく_『地下出版のメディア史』

大尾侑子『地下出版のメディア史』(慶應義塾大学出版会、2022)を読みました。

 

本書がここまで紙幅を割いてきたのは、日本の近代化過程においてけっして「公式」的、「正統」的ではないが、その実、もっとも愚直で真摯に、ときにはねじれたかたちで「知性/教養」に向き合ったインテリたちの遊戯と闘争の軌跡である。_385ページ

 

というかたちでまとめられているように、

 

地下出版が、大正教養主義的な正統派のインテリと距離を取りながら、一方で低俗なエログロとも差異化しつて、出版の業界で彼らの位置を定めていったことが分かりました。

 

出版研究(メディア論?)の論文の書き方が、なんとなく分かったことも、私にとってのひとつの収穫でした。なにか魅力的な研究対象があって、それに関する重要な事項をひとつひとつ広げつつ深めつつ書いていくように思いました。

 

私も、これまで雑誌を扱った研究をしたことがあります。しかし、ある問を立てて、それに関する調査結果と考察を組み立てるという方法だと、雑誌としての面白みや深みを伝えにくいなと思っていました。大尾氏のように、ある程度総合性のある書き方をすると、面白さが伝えられそうだなあと思いました。

 

勉強になりました、面白かったです。

 

 

 

体を動かしながらつぶやく_『脳が勝手に記憶するユダヤ式英語勉強法』

加藤直志 『脳が勝手に記憶するユダヤ式英語勉強法 』( サンマーク出版、2016)を読みました。オーディオブックだから正確には聞きましたですね。

 

この本で、紹介される方法の中心は、

〈体を動かしながらつぶやく〉

というものです。暗記や言語学習において、音読と身体的な活動が重要なことを指摘しています。著者の知人のユダヤ人やユダヤ人の文化的背景を根拠としながら、それが述べられています。

 

他の方法としては、割と暗記や言語学習の鉄板ともいえることを、ユダヤ的なものを背景に述べています。例えば、

  • 学習(授業)の直後に復習すべき
  • 次々に新しいものに手を出すのではなく、1つを覚えるまでやる
  • 相手の話にはきちんと質問すべき

などです。

ああ~耳が痛いですね。

学習方法の本としても勉強になりましたし、なにより著者のユダヤの人々に対する愛情が伝わる本でした。