牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

正統派でも、低俗でもななく_『地下出版のメディア史』

大尾侑子『地下出版のメディア史』(慶應義塾大学出版会、2022)を読みました。

 

本書がここまで紙幅を割いてきたのは、日本の近代化過程においてけっして「公式」的、「正統」的ではないが、その実、もっとも愚直で真摯に、ときにはねじれたかたちで「知性/教養」に向き合ったインテリたちの遊戯と闘争の軌跡である。_385ページ

 

というかたちでまとめられているように、

 

地下出版が、大正教養主義的な正統派のインテリと距離を取りながら、一方で低俗なエログロとも差異化しつて、出版の業界で彼らの位置を定めていったことが分かりました。

 

出版研究(メディア論?)の論文の書き方が、なんとなく分かったことも、私にとってのひとつの収穫でした。なにか魅力的な研究対象があって、それに関する重要な事項をひとつひとつ広げつつ深めつつ書いていくように思いました。

 

私も、これまで雑誌を扱った研究をしたことがあります。しかし、ある問を立てて、それに関する調査結果と考察を組み立てるという方法だと、雑誌としての面白みや深みを伝えにくいなと思っていました。大尾氏のように、ある程度総合性のある書き方をすると、面白さが伝えられそうだなあと思いました。

 

勉強になりました、面白かったです。