牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

私は私を合理的だと思い込んでいる_『予想どおりに不合理』

ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』を読みました。

引用と感想

ラップがこれまでの経験から学んだのは、値の張るメイン料理をメニューに載せると、たとえそれを注文する人がいなくても、レストラン全体の収入が増えるということだ。なぜだろう?大抵の人は、メニューの中で一番高い料理は注文しなくても、次に高い料理なら注文するからだ。_30ページ

これは実感としてとてもわかる気がします。たとえ買われなくても、一番高いメニューじゃない、という安心感を持たせるためでしょうか。

 

人は持てば持つほど一層欲しくなる。唯一の解決策は、相対性の連鎖を断つことだ。53ページ

足を知ると言うことですが、難しいですね。「欲しい」と思ったときに、いったん立ち止まって、今手にしているものより、それは本当に魅力的か、考える必要がありますね。

 

遅刻したぶんをお金で支払うことになると、親達は状況を市場規範で捉えるようになった。つまり、罰金を課されているのだから、遅刻するもしないも切れるのは自分とばかりに、親たちはちょっと迎えの時間に遅れるようになった。_134ページ

人は社会規範と市場規範を使い分けているということですね。だから、親子関係や友だち関係では、金銭の問題がないほうがうまくいくのですね。こどもの誕生日は、これからもお金ではなくプレゼントにしようと思いました。

 

性教育は、生殖器官の生理学や生物学より、性的興奮を伴う環境にどう対処するかという点にもっと焦点を当てるべきだ。_194ページ

これ、本当にそうですよね。性は相手が必要なものなので、自分勝手ではいけません。性の衝動との付き合い方は、ただひとりで思い悩むだけでなく、開かれたかたちで考える場があっていいと思いました。

 

一つ目の奇癖は、バスケットボールのチケットの例でみたように、自分が既に持っているものにほれこんてしまうことだ。(略)ふたつめの奇癖は、手に入るかもしれないものではなく、失うかもしれないものに注目してしまうことだ。(略)三つ目の奇癖は、他の人が取引を見る人も自分と同じだと思い込んでしまうことだ。どういうわけか、ワーゲンバスを買ってくれる相手が、自分と同じ気持ちや感情や思い出を共有していると思ってしまう。_251ページ

思い当たりがありすぎて心が痛いですね。私は、地方の同人誌なんかをちまちま読んでいるのですが、自分がハマっているので、それにものすごい価値があるように感じてしまいます。でも「それがなんで今大事なの?」と聞かれると答えに窮することがあります。

 

人々はチャンスがあればごまかしをするが。決してめいいっぱいごまかすわけではない。――十戒を思い出すにしろ、ちょっとした文面に署名するにしろ――ごまかしを完全に止める。(略)誘惑にかられている間に道徳心を呼び起こされると、正直になる可能性がずっと高くなる。_397ページ

率直に言って、研究費不正のための講習やチェックを面倒だなと感じるときがありmす。しかし、道徳心をたびたび思い起こすためには必要なのかも知れません。

 

しかしもっと視野を広げて、私たち自身が代用貨幣と不正をしてしまう傾向との関連に気づくべきだ。現金から一歩離れたとたん、自分では想像できないほどの不正をしてしまうのだと自覚する必要がある。個人として、国家として、これを認識しなければならない。_422ページ

これは、浜矩子氏も言っていましたね。私は、現金派ではないのですが、現金が物体であるからこそ、道徳心を喚起できるという側面は重視すべきだと思いました。

 

全体的な感想

脳科学の本をいくつか読む中で、人間って合理的でないんだな、とつくづく思いました。どうしたときに不合理な判断をするのか気になって、そうした類いの本を読んでいます。この本は、具体的で生活に密着した実験がたくさん収録されていて面白かったです。