牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

相手の心の動きを考えて伝える_伝えることから始めよう

高田明『伝えることから始めよう』(東洋経済新報社、2017)を読みました。オーディオブックなので、実際は聞きましたですね。手元にはないのであまり細かいところは覚えていないのですが、とても面白かったです。

 

計画は立てず、その場で最善を尽くす

高田明氏は電気屋さん、カメラ屋さん、写真屋さん、そしてラジオを使った通信販売、と少しずつ事業を開拓していきます。しかし、どれも計画したものではなかったそうでず。その場でお客さんの反応をみて、よいと思ったらすぐ行動する。それの積み重ねだったと言っていました。

 

いいと思うものを、相手がいいと思うように伝える

高田明氏の、いいものを伝えたいという熱量には衝撃をうけました。お客様の生活がよくなるはずだ、という使命感に満ちていて、私はこんな態度で古典を教えられているかな、と反省しました。

しかも、ただ売るためというより、相手の心に響くように伝えようとしています。家庭用ビデオカメラを売るときは、画素数がどうじゃなくて、子どもや孫の動く姿を残せると伝える。そして、実際に社員に自分の子を撮影させ、親として子をビデオに撮ることが、どんなに嬉しいかを、声や表情を通して伝えています。

 

よいアイディアは直前に思いつく

これは確かに!と膝を打ちました。直前までしっかり準備しても、本番の直前にいいアイディアが浮かぶことがあると、高田氏は言います。機器の小ささを示すためにポケット(?)に入れるだとか、そんなことが書かれていたと思います。ほかにも、震災だとか急なニュースが入ってきたとき、台本にはなにも書かれていなくてもそのことに触れるといいます。いま、最もホットな話題に触れることは、生放送として重要だとお考えなのですね。

この直前というのは、すごく実感します。私も授業の10分前に授業のアイディアが浮かんだり、話し始めて急に浮かぶことがあります。けれど、せっかく計画したのに、急なアイディアを実行したら破たんするのでは、と心配になってやめてしまうことがあります。まあ私は向こう見ずなのでたいてい実行しますが、失敗よりも成功のほうが確かに多い気がしました。これからもどんどんチャレンジしようと思いました。

 

頑張ったことは、頑張ったのだ

高田氏のこの姿勢には、心動かされました。高田氏は、努力や検討の末あまり上手くいかなかった経験もお持ちでした。たとえば、大学受験などは、ものすごく勉強を頑張ったそうなのですが、志望する大学にはいけなかったといいます。でも、高田氏は、その経験を自分でおとしめないのですね。結果ではなく、頑張ったという充実感に満ちており、がんばりました!と胸を張って言っています。

私は、査読に落ちたり助成に落ちたりすると、自分の努力なんて卑小で無意味だったのだと意味づけてしまいます。ほんとはめちゃくちゃ頑張ったのですけど、結果が出ないから自分を認められないし、反省と叱咤によって次につなげようと無理矢理前向きになろうとしています。でも、やっぱり頑張ったもんは、頑張ったのですよ。落ちても自分なりにはやったという達成感は確かにあって、結果が出なくても、その達成感は大事にしてよいと思いました。昨年度も2回査読に落ちたけど、私はがんばりました!!

 

全体として勉強になりましたし、心動かされた本でした。