牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

レビュー_ 『科学者たちが語る食欲』(サンマーク出版、2021)

デイヴィッド・ローベンハイマー、 スティーヴン・J・シンプソン『科学者たちが語る食欲』(サンマーク出版、2021)を読みました。

 

久々に大きなショックを受けた本でした。私は、高タンパク質/高脂肪/低炭水化物の食事を心がけていましたが、これが必ずしも良くないことが分かりました。

 

本の骨子としては、生物の食欲は、タンパク質への欲求であり、それを満たすためにその他のものを食べている、ということです。

 

個人的な驚きを3点。

①低タンパク質・高炭水化物が寿命に好影響(p.144)

驚きはこれにつきます。これがマウスとショウジョウバエの実験によって証明されています。タンパク質/脂肪/炭水化物の比率を変えた餌を与えた結果、もっとも長寿だったグループが、低タンパク質・高炭水化物のグループです。高脂肪食も長寿のメリットはないようです。

この理由としては、テロメアの長さが関係するようです(p.146)テロメアは『LIFESPAN: 老いなき世界』で話題になっていましたね。テロメアは染色体の末端にあるキャップのようなもので、このテロメアが短くなると、細胞分裂ときに複製のエラーが起き、それが老化につながります。

 

では、タンパク質の役割は?と思いますが、それが次の点とつながります。

 

②人間の体には、長寿経路と成長・繁殖経路があり、阻害し合う(p.149)

長寿経路はテロメアを長くし、免疫やミトコンドリアの機能を高めます。先の高炭水化物食で作動します。

成長・繁殖経路は、その名の通り、進化上の目的を果たすために、繁殖能力を高めます。高タンパク質食で作動します。

そして、この経路は互いに阻害し合う関係にあるようです。(p.151)だから、高タンパク質食では、沢山の子を産み、筋肉質で痩せて短命のマウスができるそうです。

 

ちなみにここで言われている炭水化物は、全粒の穀物や食物繊維を含む芋・豆です。白砂糖や白いご飯パンではありません。残念ながら。

 

③グリコーゲンはグルコースが結合したもので、体内に貯蔵できるのは1kgほど。(p.348)

これは単に私が覚えていなかったことです。

 

そして、この本が面白いのは、昆虫の研究者によって書かれているということです。バッタがどのように自らの食べるものを決めているか、という点が研究のスタートになっています。そこでバッタの食欲ががタンパク質の欲求であることが判明し、そこから哺乳類の話へつながります。全体的に、栄養学や医学とは書きぶりが異なり、その点も面白かったです。

 

私が低炭水化物を心がけていたのは、高血糖状態にならないようにしたかったためです。私の理解では、高血糖状態は、血管を傷つけるなどそもそも体に害があります。そして、次に問題なのは、インスリンがでることです。インスリンが出ると、血液中の血糖は体脂肪に代えられ、一時的に食後低血糖になり頭がぼーっとします。また、インスリンを出し続けていると、インスリンが効かなくなってしまい、2型糖尿病につながります。

 

そう思って炭水化物を減らし、代わりに脂質やタンパク質をとっていましたが、はてどうしましょう。血糖値スパイクが起こらないように、炭水化物をとるのがよいのかなと今は考えています。