牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

押しつけられた一生懸命を捨てて、自分に従う_『あやうく一生懸命生きるところだった』

ハ・ワン『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社、2020)を読みました。

 

面白かったポイントをまとめます。

 

過大な評価・過大な目標は、不幸のもと

  • ほんの少し顔を上げて周囲を見渡すだけで、他の選択肢が色々あると気づくのに、執着してしまうとそれが見えなくなる。たった一つ、この道だけが唯一の道だと信じた瞬間、悲劇が始まるのだ。60
  • 実際のところ、その中の一つや二つでも満たされるなら、なかなかいい仕事と言えるのではないか?166
  • 告白すると、僕はまさにその〝自分を過大評価している人間〟そのものだった。自分が大人物だと思い込み、将来もそうなると固く信じていた。237

 

学歴・職業それを含めた自分に、過大な目標を定めると、それに満たない現状を許せなくなります。しかし、それらの目標は、人から聞いたことをもとに、非現実的に作り上げたのではないでしょうか。それならば、それは達成しがたいし、達成すべきものではないのかもしれません。

 

自分の速度で、自分のやりたいことをやる

  • 大人は、もう少し欲望に正直になる必要がある。遊びたいなら遊べばいい。大義名分はそれから作ればいいのだ。92
  • もしかすると、もっとやらかすべきだったのかもしれない。たとえ下手こいたとしても。143
  • 人はそれぞれ、その人なりの速度を持っている。自分の速度を捨てて他人と合わせようとするから、つらくなるのだ。205

大人になると、遊びにも「息抜き」「家族サービス」などの大義名分が必要になります。子どもを見ているとよくわかりますが、遊びってそんなんじゃないですよね。自分が遊びたいから遊ぶだけで、そこに他者に説明するための目的も大義名分もありません。

仕事は、量を年齢で割られて速度が評価されます。でも仕事の速度って、ひとそれぞれだから、平均を考慮することはありません。

 

隣の芝は、隣にあるから青く見える

僕らが嫉妬するのは、自分と同等または格下だと信じていた奴らが〝自分にないもの〟を手にした時だ。はなから越えられない壁の向こう側の人々は憧れの対象ではあれ、嫉妬の対象ではない。(略)似たレベルの人間同士、あいつよりまし、こいつよりマシだとどんぐりの背比べをしながら生きていくのが人間世界なのかなと思う。246

嫉妬って嫌ですね。でもしちゃうから嫌ですね。近い人しか嫉妬しないと言われると、嫉妬の不毛さが分かります。

 

感想

私は一生懸命が好きですが、自分のペースで、自分の好きなことをやってるから、楽しいのかなと思いました。焦るのが嫌いなのも、自分のペースを乱されるからなのかもしれません。自分を説明する言葉を獲得できました。

 

この本を劣等感とプライドでがんじがらめになっている学生たちに読ませたいですが、俺を馬鹿にするな!と怒られるだろうな・・・。劣等感やプライドって個人の深いところにあるので、それを、不要なものだ、と面と向かっては言うのははばかられます。授業で紹介する程度にしようかな、と考えています。