牧千夏の話したいこと

読んだ本や考えたことを勝手に紹介しています。

不安もイライラも運動でごまかそう_『生物学的に、しょうがない!』

石川幹人『生物学的に、しょうがない!』(サンマーク出版、2021)を読みました。

 

簡単にまとめます。

 

不安もイライラも運動で解消

  • これはじつは、死にそうな恐怖が減ってしまったがために不安が膨らむという、皮肉な関係なんです。たとえば大災害が起きてそれを生き延びれば、危険を出したと認識できて不安が去ります。「上司の小言なんか大したことないや」と思えてきます。(略)私たちはごく小さな危険を過大視して恐怖を慢性化させているのです。(略)文明社会で不安が高じるのは仕方がないので、少しでも上手く解消する手立ても講じましょう。最大の方策は運動です。恐怖への対処である「戦う」と「逃げる」はともに運動なので、動物は恐怖を感じた時に爪をたてる、お尻を持ち上げるなどの運動の準備をします。32ページ
  • しかし、ついこの間まで、紛争を解決する手段は暴力でした。現代社会のルールでは「暴力なしよ」なのに、私たちの心の備えは「まず暴力を試してみる」どうなっているのです。(略)「暴力なしよ」を実践する私たちは、身体の体勢が暴力向きになってもそれを抑制します。それがイライラの原因です。47ページ

 

不安やイライラを感じたとき、暴力的になってしまうのは、それに対処しようという動物的な本能なのですね。人に危害を加えないかたちで、運動しようと思いました。

 

感情は行動のための動機付けでしかない

  • つまり、注意散漫は、もっと大事なことに気付いた時に、そちらに切り替えるための自然な仕組みなのです。70ページ
  • このように、後悔すると行動の成功率が上がるので、本来後悔はいいことなのです。いいことのはずなのに、なぜ後悔すると〝嫌な感じ〟がするのでしょうか。それは、嫌な感じの方が過去の体験も覚えていられるからです。(略)恐怖や怒りなどで興奮している時には、脳からノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌され、そのせいで記憶力が上がるのです。104ページ
  • 生物学的に感情は、動物の行動を起こしたり方向付けたりするものです。現状が満ち足りた状態であると、あなたの行動を起こさなくて良いので、喚起される必要がないのです。つまり幸せなはずの状態では、幸福感は喚起されないことになります。実のところ幸福感は、「これから良い状態になるぞ」という期待によってもたらされるのです。あなたも「休みを取って旅行に行くぞ」という時には、幸福感に包まれるけれど、いざ行ってみると意外に気疲れも多く、思ったほど幸せではないという経験があるでしょう。110ページ
  • 恋心を感じた時はポジティブな興奮です。戦闘や逃走と同じように生殖行動にも運動が必要なので、その準備のための興奮体制が欠かせないのです。ところが興奮が繰り返される鎮静化するようになります。いわゆるハネムーン期間の終了です。脳の中では、度々分泌されていた興奮のための神経伝達物質が出にくくなっていきます。繰り返しの興奮は体力を奪うので、脳に防御反応が備わっているのです。そうなると「あばたもえくぼ」に見えていた興奮状態から「あばたはあばた」の冷静状態に転じていきます。(略)しかしヒトには人間同士を結びつける友愛が進化しています。恋愛が友愛に転換できれば、パートナーの関係を維持できるのです。友愛は愛情ホルモンとされるオキシトシンによって成立しています。228ページ

感情は、その感情を起こしたことがらに対する評価ではないのですね。恋のドキドキは恋人が魅力あるからではなく生殖行動の準備、幸せ感は次の行動のための動機付けなのですね。そう思うと、幸せやドキドキを得るための方法も考え直す必要がありますね。

 

感想

とても面白かったです。私は○○だからだめだ、となりそうなことに対して「それ生物にプログラムされたことだからしょうがないよ」と斬っていくのが痛快でした。